剣客奇譚カルナ 3話 No.04
2007年 06月 04日
二体の鬼が踊る。刀を剣を交わし、ときに流れる水のように滑らかに、ときに激しい炎にようにぶつかり合う。二体が激突するたびに白と黒の炎が龍のようにうねり、大地を焦がしていく。それはさながら地獄の様。
《はははっ!楽しい!楽しいぞカルナよ!!》
GAAAAA!!!
カルナは、仁は理性を失っていた。ただ怒りだけがその身体を動かしていた。怒り、憎しみ、その全てをルドウに叩きつけるように戦っていた。そこには他の意識は無い。ただ相手を殺すためだけに、それだけのために刀を振るっていた。
ルドウが獣のように荒れ狂うカルナの刀を捌きながら、力を集約させる。そしてスキをついて一気に距離を取る。
《穿て!!我が“爪”よ!!》
“爪”それは“牙”と同じく鬼の力を象徴するもの。ルドウの左手が眩く光り、槍となった炎が撃ち出される。
GAAAA!!!
カルナは全ての槍を叩き落としながらルドウに肉薄する。
《いいぞ!いいぞ!!》
二つの刃が合わさり、炎が弾ける。二つの魔剣が互いを破壊しようと嘶く。
《感じる・・・感じるぞ!お前の力が猛っているのをッ!!!》
AAAA!!!
二体がお互いの剣の威力で大きく飛び、後退する。
《カルナよ・・・お前の力、もっと見せてもらおうか!!》
ルドウが剣を構える。剣を正面に縦に構え、その表面を炎を纏った左手がなぞる。文章(もんしょう)が浮かび、白い炎がルドウの剣を牙へと変えていく。
GOOOOOOOO!!!!!
白炎を全身に纏いながら牙を携えてルドウが走る。
GAAAAA!!!!
それに呼応するようにカルナが吼えた。刀を正面に横に構え左手を宛い、刀を引くようにして刀身をなぞる。文章が浮かび、溢れる黒炎が牙を形作る。
《いくぞカルナァァァ!!!》
二つの燃え盛る焔の牙が・・・・
「起きろ」
「・・・」
「起きるんだ」
「ん・・・」
声に呼ばれて仁が身体を起こす。そこは今まで居たはずのアートギャラリーの前ではなかった。暗い場所・・・何か感覚がおかしいのを仁は感じた。ここにいる実感がないのだ。まるで夢か何かの中に漂っているかのような感覚・・・。
「ここは・・・」
仁ははっきりとしない頭を押さえた。
「怒り・・・怒りが私を呼び起こした」
また声が聞こえた。仁は辺りを見回すがそこは光のほとんど無い暗い場所。何も見えない。だが、気配がする。
「誰・・・?」
暗闇の中に何かが居る。姿は見えないがそこに何かが居るのが仁には分かった。
「私が誰か、お前にはわかるはずだ」
「・・・・カルナ」
仁の言葉に反応するかのように暗闇の中に一つの影が揺らめき現れる。
「人よ。お前は今眠りの中にある。私の意識の遙か底に」
「・・・」
声は静かに語る。
「だが、それは私も同じだ。自らの“本能”の中に意識を落とし、目覚めることが出来ぬままにいる」
「・・・?」
「今はただ、その本能がお前の想いに反応し戦うのみ」
「何を言って・・・」
「人よ。私の本能に、お前の本能に打ち勝たねば滅びることになる」
「・・・」
「だが奴もまたそうだ。今、奴は己の本能を押さえきれずにいる。だがいずれ・・・人よ、私はまだお前を失うわけにはいかない。私が持てる力を与えよう。本能に打ち勝つのだ・・・そして、いずれ私が・・・」
・・・二つの燃え盛る焔の牙が重なることはなかった。黒い爪が閃き、衝撃がルドウの身体を襲った。
《な・・・に・・・?》
《・・・》
ルドウの剣から文章が消え、同時に炎もその形を失う。自分の鎧殻を砕き、身体に刻まれた五つの爪痕に愕然とする。その傷口から黒い血液があふれ出し、ルドウの白い鎧殻を染めていく。
《まさかこんなところで・・・“爪”の力に目覚めたのか・・・?》
爪・・・そう、カルナは爪を使った。ルドウの牙をかわし放った神速の一撃。黒い五つの、文字通り爪の姿をした黒い炎・・・それがカルナの“爪”の力。
《ここまでだ》
黒い炎の牙をルドウに突きつけながらカルナは・・・いや、仁は言った。
《素晴らしい・・・さすがは我が宿敵・・・ッ!》
傷つきながらも興奮を隠せない様子でルドウは言った。それは戦いへの欲求、強い敵への渇望がもたらすものなのだろう。しかし・・・
《俺はお前の宿敵なんかじゃない》
対する仁は冷静に言った。
《なに?》
思わぬ言葉にルドウの動きが止まる。
《俺は、上梨 仁だッ!!》
《はははっ!楽しい!楽しいぞカルナよ!!》
GAAAAA!!!
カルナは、仁は理性を失っていた。ただ怒りだけがその身体を動かしていた。怒り、憎しみ、その全てをルドウに叩きつけるように戦っていた。そこには他の意識は無い。ただ相手を殺すためだけに、それだけのために刀を振るっていた。
ルドウが獣のように荒れ狂うカルナの刀を捌きながら、力を集約させる。そしてスキをついて一気に距離を取る。
《穿て!!我が“爪”よ!!》
“爪”それは“牙”と同じく鬼の力を象徴するもの。ルドウの左手が眩く光り、槍となった炎が撃ち出される。
GAAAA!!!
カルナは全ての槍を叩き落としながらルドウに肉薄する。
《いいぞ!いいぞ!!》
二つの刃が合わさり、炎が弾ける。二つの魔剣が互いを破壊しようと嘶く。
《感じる・・・感じるぞ!お前の力が猛っているのをッ!!!》
AAAA!!!
二体がお互いの剣の威力で大きく飛び、後退する。
《カルナよ・・・お前の力、もっと見せてもらおうか!!》
ルドウが剣を構える。剣を正面に縦に構え、その表面を炎を纏った左手がなぞる。文章(もんしょう)が浮かび、白い炎がルドウの剣を牙へと変えていく。
GOOOOOOOO!!!!!
白炎を全身に纏いながら牙を携えてルドウが走る。
GAAAAA!!!!
それに呼応するようにカルナが吼えた。刀を正面に横に構え左手を宛い、刀を引くようにして刀身をなぞる。文章が浮かび、溢れる黒炎が牙を形作る。
《いくぞカルナァァァ!!!》
二つの燃え盛る焔の牙が・・・・
「起きろ」
「・・・」
「起きるんだ」
「ん・・・」
声に呼ばれて仁が身体を起こす。そこは今まで居たはずのアートギャラリーの前ではなかった。暗い場所・・・何か感覚がおかしいのを仁は感じた。ここにいる実感がないのだ。まるで夢か何かの中に漂っているかのような感覚・・・。
「ここは・・・」
仁ははっきりとしない頭を押さえた。
「怒り・・・怒りが私を呼び起こした」
また声が聞こえた。仁は辺りを見回すがそこは光のほとんど無い暗い場所。何も見えない。だが、気配がする。
「誰・・・?」
暗闇の中に何かが居る。姿は見えないがそこに何かが居るのが仁には分かった。
「私が誰か、お前にはわかるはずだ」
「・・・・カルナ」
仁の言葉に反応するかのように暗闇の中に一つの影が揺らめき現れる。
「人よ。お前は今眠りの中にある。私の意識の遙か底に」
「・・・」
声は静かに語る。
「だが、それは私も同じだ。自らの“本能”の中に意識を落とし、目覚めることが出来ぬままにいる」
「・・・?」
「今はただ、その本能がお前の想いに反応し戦うのみ」
「何を言って・・・」
「人よ。私の本能に、お前の本能に打ち勝たねば滅びることになる」
「・・・」
「だが奴もまたそうだ。今、奴は己の本能を押さえきれずにいる。だがいずれ・・・人よ、私はまだお前を失うわけにはいかない。私が持てる力を与えよう。本能に打ち勝つのだ・・・そして、いずれ私が・・・」
・・・二つの燃え盛る焔の牙が重なることはなかった。黒い爪が閃き、衝撃がルドウの身体を襲った。
《な・・・に・・・?》
《・・・》
ルドウの剣から文章が消え、同時に炎もその形を失う。自分の鎧殻を砕き、身体に刻まれた五つの爪痕に愕然とする。その傷口から黒い血液があふれ出し、ルドウの白い鎧殻を染めていく。
《まさかこんなところで・・・“爪”の力に目覚めたのか・・・?》
爪・・・そう、カルナは爪を使った。ルドウの牙をかわし放った神速の一撃。黒い五つの、文字通り爪の姿をした黒い炎・・・それがカルナの“爪”の力。
《ここまでだ》
黒い炎の牙をルドウに突きつけながらカルナは・・・いや、仁は言った。
《素晴らしい・・・さすがは我が宿敵・・・ッ!》
傷つきながらも興奮を隠せない様子でルドウは言った。それは戦いへの欲求、強い敵への渇望がもたらすものなのだろう。しかし・・・
《俺はお前の宿敵なんかじゃない》
対する仁は冷静に言った。
《なに?》
思わぬ言葉にルドウの動きが止まる。
《俺は、上梨 仁だッ!!》
by eternal-d-soul
| 2007-06-04 06:40
| 連載小説:剣客奇譚カルナ