管理人山猫礼と副管理人ユースケによる小説と絵のブログ 毎週水曜更新b


by eternal-d-soul
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近未来新都心 Chapter03 NO.01

「くそ!」
 サガトは鋼鉄の扉を叩いた。厚い鋼鉄製のそれは彼の拳程度ではビクとしもしない。そして恐らく銃弾も通しはしないだろう。
『ちょっと!ホントやばいってのよ!なんなワケよ!?このバケモノは!?』
 イヤホンからはイーシャのパニックに陥った声が聞こえてくる。まずい・・・早く救出行かなければいけない。だが・・・
「くそ・・・!!」
 鋼鉄の扉は一行に開く気配を見せない。地下に位置しているこの部屋には窓もダクトもない。しかもこの狭さでは爆薬も使えなければ、どこか別の脱出路を探すのも不可能だろう。まして情報があまりにも少なすぎる。イーシャの言うバケモノが何なのか、自分をここに閉じこめた奴は何者なのか・・・恐らく依頼された調査の目標ともいえるだろうそれらの姿が一切確認できていない。映像端末をイーシャに預けているこの状況では外の状態すらロクに確認できない。その目標が人間なのか、そうでないのかすらも。
「どうすれば・・・」
ヴゥン!
「!?」
 モーターが動き出したような低い音が室内に響き、室温が急激に下がり始める。
「凍死させるつもりか・・・!?」
 どうやらここは冷凍保管庫の類らしい。一度人が閉じこめられれば、それは特注の棺桶になるだろう。
「ラウル!おい!ラウル聞こえるか!?」
 マイクに向かって叫ぶがラウルからの返事はない。
「おい!ラウル!!」
 まさか、ラウルにまで何かあったとでも言うのだろうか?

《おい!ラウル!!》
 ラウルの眼に映る色・・・それは自分の瞳と同じエメラルドグリーンの光・・・
『覚えがある・・・』
 見たことがある。この景色。見たことがないはずなのに・・・どこかで・・・どこだ?
 通路沿いに規則的にならぶ機械と円筒形のガラスケース・・・漏れるエメラルドグリーンの光・・・そして・・・
 ラウルはそれを眺めながら立ちつくしていた。何かに魅せられたかのように。

前日・・・・
PM2:15・・・・
経済区第1セクション ユニオンビル 警備部隊第6課メインオフィス・・・・

 お昼休みの時間が過ぎ、雑務に追われ始めたオフィスに一人の男が現れた。黒を基調とした服装をしている黒髪の男、サガトだ。慌ただしく走り回る行員を器用に避けながら、一番奥にある警視総長室に向かった。
「どーも、っと・・・・」
 サガトがドアを開けると、そこにウォルスの姿はなく、代わりにリエルが警視総長席に座っていた。
「これ座り心地いいなぁ・・・」
 サガトに気づいていない彼女は背もたれに身体を預けたり、離したりしながら椅子の感触を確かめている。
「この肘置きなんかもう・・・」
「なにやってんだ?リエルちゃん」
「えっ!?ひゃ!?」
 いきなり声をかけられたリエルが驚いた拍子に椅子ごと床に倒れた。
「お、おい、大丈夫か?」
「いたた・・・・」
 リエルは腰のあたりをさすりながら立ち上がった。
「もう・・・いきなり声かけないで下さいよぉ・・・」
 リエルが涙を滲ませながらサガトを睨む。
「悪い悪い」
 口はではそう言うものの、さほど悪びれた様子もないサガトを恨めしく思う。毎度ながらサガトに振り回されているので慣れてしまっている自分も恨めしい。
「そんで、ウォルスに呼ばれて来たのにアイツが居ないってのはどうゆうことだ?」
「ウォルス警視総長は上から緊急の呼び出しがかかったので、セラフカントリーの方にお出かけになりました・・・よいしょっと・・」
 リエルが倒れた椅子を持ち上げながらそう説明した。
「セラフ?総合管理局になんでまた・・・」
「さぁ・・・私にはなんとも・・・」
「まぁその話は俺が直接ウォルスに聞いておくさ。それで、今回の依頼の内容は?」
「あ!そうでしたね!」
 今思い出したかのようなリアクションでリエルはデスクの上から幾つかの資料を選び出してサガトに差し出した。
「はいどうぞ!」
『忘れてたのか・・・』
 この抜け具合には毎度ながら不安にさせられる。これでよく警視総長の秘書が務まるものだ・・・と。もっともそこが彼女の良い所とも言えるだろうが。
「じゃ今回の依頼を説明しますね!適当に座って下さい」
 リエルに言われた通りにサガトは適当にデスクの
上に腰を降ろした。
「そこは・・・」
「適当にって言っただろう?」
「うー・・・・まぁいいです。それじゃ説明しますね」
 リエルは自分の分の資料を手に取った。
「今回の依頼の主な内容は調査です」
「主な・・・?」
「主な、です。何せ細かい所が全然分からないので」
 全然・・・一気に不安にさせられる言葉だ。
「・・・それで?」
「はい。調査する目標は東部工業区のナイアーズケミカルが保有していた廃プラントです」
「ナイアーズ?半年前に倒産した医薬品製造会社か・・・」
「そうです。同プラントを取り壊して、新しくブライブスが農業用品製造工場を建造しようと6名の調査員を派遣したのですが・・・・」
「全員行方不明・・・か」
「え、なんで分かるんですか?」
 リエルが驚いた顔でサガトを見る。
「いや、資料にそう書いてあるから・・・」
「あ、あー、あ・・・そゆことです」
「・・・・」
 リエルが決まりの悪そうな顔で俯いた。
「と、というワケで!そこの調査を依頼したいんですよ!」
「そりゃ分かったが・・・なんでそれが警備隊の管轄になるんだ?全員行方不明ってのは確かに腑に落ちない所があるが、それでも本来なら企業がフリーターを雇うなりして独自調査をするはずだろう?」
「え?え、えっと・・・それはですね・・・」
 リエルが慌てて資料をめくりだす。どうやら肝心な理由を忘れたらしい。
「・・・・」
 しばらく待っているとリエルが問題のページを発見したのか顔を輝かせた。
「あ!ここです!ありました!」
「・・・そう」
 サガトが、がっくりと首をうなだれる。
「えーとですね・・・ブライブス側は不測の事態に備えて二名のフリーターを同行させていたそうです」
「二人も?その二人とも連絡が取れないのか?」
「みたいです。ジェームズ=フライとレクリー=ビリアム、あ、写真とか詳しいデータはその資料に載ってますよ」
「ふむ・・・」
 サガトは資料をめくった。ジェームズ=フライ、レクリー=ビリアム・・・二人とも全盛を過ぎているとは言えかなりの実力の持ち主だと聞いている。実際にその実力のほどを確認したことはないが、ここに載せられている経歴をみても調査に出向いて行方不明などということは到底考えられない。よほどの事態が起きていない限りは・・・。
「それで、今回の依頼は調査ってことです」
「なるほどね・・・それにしてもブライブスはなんでフリーターを二人も?」
「それはですね・・・妙なことがあるからなんですよ」
「妙なこと?」
「はい。ここの経営主であるナイアーズはもう倒産しているのに、なぜか電力が供給されているみたいなんです。ラインをカットしようとしてもプログラムに特殊な細工がされてるみたいで・・・」
「そうか・・・つまりはその原因も含めて、もろもろ俺に調査しろってことか」
「みたいですね・・・なんか危険多そうですけど」
 リエルの言うとおりだ。フリーターが二人も行方不明という事態はただ事ではない。しかも分からない事だらけの上に怪しげな臭いがプンプンときている。
「相変わらず無茶な仕事ばかり押しつけやがる・・・」
 それだけの報酬こそ出はするものの、他のフリーターに比べて無理な仕事を多く回されていることは明らかだ。
「あ、でも今回は参加人数分報酬を出すって言ってましたよ!」
 そんなサガトを見てリエルが元気づけるつもりでそう言った。
「ますますヤバそうな雰囲気が増したな・・・・」
 だがそれは逆効果に終わった。
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by eternal-d-soul | 2007-07-19 03:17 | 連載小説:近未来新都心